デジタルカメラのおけるワークフローを考える

デジタルのメリット・デメリット その2

以前にも、この話題に触れましたが、今回は少し違った視点で考えてみます。
キーワードは「人」「物」「金」です。

人的なメリットとデメリットを考える

デジタル以前…すなわち銀塩フィルムを用いていた時代では、撮影後のフィルムをラボに持ち込んで現像処理をしていました。
特殊なケースとして撮影者自身が自家処理をする場合もあるのですが、極稀な事で一般的ではないでしょう。
ラボに現像を出すと言う事は、他人に委ねると言う事ですから、処理されている時間は他の事に使えます。

デジタル化されて、(ケミカルによる)現像処理が不要になったわけですが、データ処理と言う「仕事」が付いてきます。
通常は撮影者がパソコンを用いてデータ処理する事になると思うのですが、撮影に付随する作業時間は増えている事になります。

JPEGデータでの記録をして没カットを現場で消去しておけば、作業時間そのものは随分と短くて済むはずです。
が、そうではない撮影スタイルで仕事をする私の場合は、結構な時間をかけているわけです。
無論それは自らが納得できる画像データを納品するために必要不可欠と考えてやっていることで、
決して強要されている訳ではありません。

ラボの仕事が減る分、フォトグラファーの仕事が増えているのではないかと感じる事も少なからずあります。

印刷だと製版オペレーターの仕事が減っているのではないかと推測します。
おそらくそれは、デザイナーさんの仕事として組み込まれていて、その分デザイナーさんの負担が増えているかもしれません。

それに伴った弊害として「デジタルだと色が出ない」と言う事があげられます。
これは正しいカラーマネージメントの運用方法がワークフローの中に組み込まれていない可能性が考えられます。
実はこの件、結構デザイナーさんが悪者になったりするのですが、実際には印刷会社さんの方に問題がある事も多いようです。

結局、デジタルのワークフローで仕事に携わる延べ人数は少なくなっていると考えられるので、人件費の抑制という意味で
メリットが発生していると考えられるのですが、それぞれが専門分野以外での作業が必要となるために、
少なくとも現時点では、まだ「一発OK」と言うわけにはいかないようです。

物質的なメリットとデメリットを考える

使い切りの銀塩フィルムの代わりに繰り返し使う事が出来るフラッシュメモリを使うようになったため、
フィルムの期限を気にする事も無く、また乳番の違いによる発色の違いも無くなり良い事ずくめ…とは言えない状況があります。

コンパクトフラッシュやSDカードなどのフラッシュメモリには寿命があります。
また物理的・電気的な破損によって使用できなくなる事もあります。
そのような場合、新たに買い足す必要があります。

撮影後はどうでしょう?
現像されたポジから使用するカットを切り出して管理していましたから、それなりに場所を必要としていました。
デジタル化されデータとして保存できるようになったため、場所の面では随分と楽になったと考えられます。

しかしデータを保存するために保存メディア(HDDやCD-R、DVD-Rなど)を、どんどん買い足して行く必要が出てきました。

購入資金が増大するというデメリットがある反面、撮影時のデータを保存しておけると言う事は、
フォトグラファーの手元に残しておけると言う事です。

フィルムだとポジ

品してしまえば、使用されたカットは手元に残りません。
これはやはり撮影した者としてメリットと考えられる部分でしょう。

金銭的なメリットとデメリットを考える

機材の減価償却と言う面から考えてみましょう。

現行の税制上ではカメラの減価償却期間は 5年と言う事になっています。
仮に100万円のデジタルカメラを購入したとすると、購入価格の 90% にあたる 90万円 が償却対象金額となります。
これを 5年 の定額制で計算すると、年間に 18万円 ずつ経費として算入できる事になります。
厳密には月割りですから、1ヶ月に1万5千円ずつという計算になります。

※税制改正により平成19年度(2007年度)分より減価償却の計算方法が変わります。
詳しくは財務省および国税庁のウェブサイトでご確認ください。
参考までに…上で挙げた例だと償却対象額が99万9999円(残存価値1円…備忘額として)になるので、
年間に19万9999円まで経費算入できます。月額にすると1万6666円ですね。

おそらく仕事でカメラを使っているのなら、感材費(フィルム代+現像代)でこのくらいずつは使っていると思います。
そう考えた場合、感材費と言う消耗品と減価償却額が相殺できるはずなので、少なくともコスト面でのデメリットは少ないと
考える事が出来そうです。が…デジタルカメラの商品サイクルとの兼ね合いを考えた場合だと
コスト面でのメリットが目減りしてしまう可能性が大いにあります。

すなわち商品サイクルと減価償却期間とのズレです。

今までの経験では資産の減価償却期間満了を待たずに新しいカメラが出てきています。
常に新製品を追いかける事をしなくても、3年程度で性能面で追いつけなくなります。

もちろん以前の物を使い続けると言う選択肢もあります。むしろそちらの方が健全だと言えるかもしれません。

しかしデジタル比率がどんどん上がって行くと、ブローニーで撮影していた対象もデジタル一眼でカバーする必要が出てきます。
そうなると数百万画素のデジタルカメラでは、相当な無理をして使い続ける事になり、
クオリティの向上を求める事が難しくなっていきます。

とは言うものの、正直千差万別なので皆が同じように感じているのかどうかは判りかねますが…

では製作コスト面を考えてみましょう。

印刷物を製作するコストは横ばいか下がっているのではないかと思います。
しかしその中で写真という分野のみを考えた場合、全体としてコストは上がっていると言わざるを得ません。
カメラ然りパソコン然り。かなりコストがかかります。
ではそれに見合った金額のギャランティを得られているのかと言うと、どうでしょう?

あまり言うと「高額なギャラを要求される」と思われて敬遠されても困りますし(笑)

正直な感想としては、デジタル化による世代交代が生まれ、それとともに一種のデジタルディバイドと呼べる格差が生じていると考えます。
デジタルへのスキルを持つ者が残り、そうでない者は淘汰されています。

職業写真家として現状は、いわゆる「勝ち組」に属すると思っていますが、明日の身分保障は無いわけです。
その辺り、いずれブログか何かで考えを述べるかもしれません。

結局のところ

何事もそうなのですが、メリットもデメリットも同時に存在します。
特に今回はデメリットを強く出している気がしますね。

しかし理想的なデジタルワークフローが実践できれば、コストの削減とクオリティの向上を
同時にクリアできるのだと信じています。
その中でどちらがより大きいのかを判断して行動する必要があるのだと考えます。

まだまだ過渡期で成熟されるまでは暫く時間がかかりそうです。

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