デジタルカメラ自由研究

プリンタ出力を検証する その3

前回までの検証で高画質でプリンタ出力するためには、画素密度の高い(すなわち高画素で記録された)データの方が
有利であり、それをさらに大きく出力するためには、より多くの画素が必要である事が判りました。
しかし、実際の鑑賞距離ではサンプル画像程の差が認められない(画質の差は小さい)事も判りました。

画質面において、画素以外の要素があるのでしょうか?
前回までの結果を踏まえ、新たな検証をしてみました。

大伸ばしプリントの弱点?

同一データから解像度を変更してプリントアウトした結果、解像度を低く設定すると
大きく伸ばせるが、ピントが甘くなったように見える事が判っています。

ピントが甘く見える…すなわちシャープネスの不足が考えられます。

銀塩フィルムからの引き伸ばしでも同じなのですが、小さなフィルムフォーマット(例えば135)から
全紙に引き伸ばすのと、大きなフィルムフォーマット(例えば4×5)から引き伸ばすのでは、
拡大率が異なります。そのため小さなフィルムから引き伸ばした写真は精細さに欠け、甘く見えるわけです。

デジタルの場合、精細さにかける部分を僅かながらデータ処理によって補う事が出来ます。
シャープネスの補強…すばわち「アンシャープマスク」や「スマートシャープ」の適用ですね。

実験

同じデータからシャープネスを変化させてプリントアウトしてみました。

基本データ
カメラ:EOS 10D
データ処理:DPP で RAW → Tiff 現像後、Photoshop CS2 の画像解像度で再サンプルにチェックを入れず 180ppi に。
プリンタ:BJ F9000
使用ペーパー:キヤノンプロフェッショナルフォトペーパー(A4 サイズ)
スキャナ:CanoScan 9900F スキャニング解像度 400dpi に設定

シャープネス設定には、Photoshop CS2 のアンシャープマスク(USM)を使用。
それぞれ全体画像をクリックすると、別ウインドウでオリジナルサイズの画像を表示します。
全体画像の赤く囲まれた部分を、ピクセル等倍で切り抜き、下に並べています。

USM:なし
ダーマトの質感やタバコの箱に欠かれている文字を見ても、かなりボケているように感じます。
USM;100 %
半径 1.0 ピクセル
しきい値:0 レベル
USM を適用した事により、ダーマトの質感が出てきました。また文字の可読性も上がっています。
USM:200 %
半径 1.0 ピクセル
しきい値:0 レベル
さらに USM を強くすると見え具合は良くなりますが、エッジ部分にやや違和感がでてきます。

実物のプリントを見るのとスキャニングされた画像を見るのとでは、少なからず差異があります。
肉眼で実物のプリントを見る方が、好印象です。
またシャープネスに関しては、200 % だと強すぎる印象があります。
よって 100 %〜150 % 程度で適度な値を試す必要があると思われます。

まとめ

今回の検証により、適切なシャープネスを適用する事により、一般的に言われる最適な画像解像度より低くても
必要充分な画質のプリントを得られる事が判りました。

参考までに今回のデータの場合、EOS 10D のデータですから、3072 × 2048 ピクセルのデータで、
360 dpi に設定した場合、21.67 cm × 14.45 cm のプリントサイズになるわけですが、
これを 180 dpi に設定すると、43.35 cm × 28.90 cm のプリントサイズを得られる事になります。
(※ A4 サイズは 29.7 cm × 21.0 cm です)

すなわち 600 万画素のデジタルカメラであっても、A4 サイズを超える大きなプリントを作る事が出来るわけです。
あるいはトリミングによって撮影した画像の作品性を高める事が可能になる…と考える事も出来そうです。

またこの事によって、プリントアウトしたものを反射原稿として入稿すると言う選択肢が考えられます。
もちろん、デジタルカメラを使ったワークフローとしては邪道とも言える方法だと思いますが、
高画素のデータが用意できない場合や、各種のトラブル、製作コスト等、様々な要素の中から
次善の策と言うか、最悪の事態を回避する方法として頭の片隅にあっても良いのではないかと考えます。

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